上司が帰るまで部下は帰れないって風潮、お前らクソだと思わないの?
会社にいる時間≠就業時間
僕がまだ会社の中で若手と呼ばれていた頃、上司にこう言われたことがある。
「おい、大石。会社におる時間イコール就業時間じゃねぇからな。残業は上司の指示のもとで行ったものしか認められんけぇな」
つまり、本来は早帰り勤務だったのに通し勤務をした場合、それが上司の指示でない場合は残業は付けるなということだった。
当時は男性社員のほとんど(体感で95%くらい)がシフト勤務なんてしていなかった。それどころか閉店後も、上司が残っているのに部下が先に帰るなんてもってのほか!という空気も色濃く残っていた。
「やることもないのに、上司が残っているという理由で会社に残っているのはおかしい」
ある時、同期入社の連中と仕事帰りに飲みに行った際、僕は漏らした。
「いやいやケンちゃんそれは違う。仕事なんていくらでもあるんだから、やることがないなんていうのはケンちゃんの意識が低いだけ」
「お前は自分が貰っている給料以上の利益を会社にもたらしているのか?まだ給料泥棒の身で自分の権利を主張するな!」
「残業ってお前、時給で仕事してる訳じゃないだろ?お前はアルバイトか?入社して何年経つんだよ……まだアルバイト気分が抜けないか?」
同調して貰えると思って言った言葉だったが同期の連中からフルボッコにされた。
確かに僕は出来が悪かった
自分でも悲しくなるほど出来が悪かった
そのため会社ではいつも上司や売場の先輩から怒られた
情けなかった
心底情けなかった
上司や先輩からだけでなく、同期入社の仲間からこの言われよう……
能力はすぐには上がらない
でもすぐに出来ることはある……
明日からは誰よりも早く出社しよう
そして誰よりも遅くまで仕事をしよう
それが無能な僕のせめてもの罪滅ぼし
当時の僕は本気でこう考えそして実行をした。すると少しずつ周囲の僕を見る目が変わってきた。
「最近、大石は変わった」
「大石の目の色が変わった」
「大石が一皮剥けた」
そんなことはない、僕は相変わらずダメ社員のままだ。
変わったことと言えば、売り場で一番早く出社し一番遅くまで残っているということだけ
それだけで僕の評価は笑ってしまうほど変わった
僕の能力は全然変わっていないのに。
少しずつ仕事が楽しくなってきた
「とにかく誰より早く出社して誰よりも遅くまで仕事をする作戦」のお陰で社内的な評価が上がった僕は仕事が少しずつ楽しくなってきた。
給料はそんなに上がっていないのだが、「周りから一目置かれている」というだけで気分が良く仕事も頑張れる。
やがて僕も責任ある仕事を任せて貰えるようになった。
出張にも行かせて貰えるようになった。
当時、僕は菓子売場の担当だったのだが、「週替わりお取り寄せスイーツ」という企画を出したところ採択され運営を任されることになった。
岡山店で一番のダメ社員と罵られていた僕だったが、この頃には「スイーツのことは大石に聞け」とまで言われるようになっていた。
周りから認められるというのは非常に気分の良いことだった
周りから一目置かれるというのは非常に気分の良いことだった
もっと売り上げを伸ばしてやろう
もっと凄いお菓子を引っ張ってきて行列を作ってやろう
仕事が楽しくなっていた僕は毎日終電ギリギリまで店に残っていた。
僕が残っていることで帰りづらくなっている後輩たちがいることも知らずに